2023上半期個人的ベスト映画

とりあえず最初に何を書こうか悩んだが、2023年の上半期でよかった映画についてにした。「ベネデッタ」のみラストに触れたが、ぼやかしているので基本的にネタバレはない。

 

1 「逆転のトライアングル」

2 「TAR」

3 「BABYLON」

4 「聖地には蜘蛛が巣を張る」

5 「ベネデッタ」

 

「逆転のトライアングル」

2022年のパルム・ドールだが、日本での公開は2023年だった。レビューを見るといろんな人が言っているが、ブニュエルが好きな人は好きだと思う。特に嵐の中のクルーズで、ブルジョアが汚物まみれになるなか、艦内放送でマルクス資本論が流れ続ける画はカオスだが、同時に謎の調和がうまれる。

 

「TAR」

まず、ケイト・ブランシェットの演技が最高である。そして、映画全体としても、多重なプロットになっており、観客が見たいものを見せる映画になっている(人によっては焦点があってないと感じるかもしれないが)。かなりの伏線があるため、解説サイトを周遊して、自分が気づかなかった伏線を見つけるのも楽しい。

 

「BABYLON」

公開前からサントラを聞きこんでいたため、「音楽に映像がついた!」という謎の感動があった。ただ、この映画は未だによかったのか悩んでおり、実際すごい映画だった気もするが、チャゼルの「こうすればすごい映画にみえるんだろ!」というのが透けて見えている気もした。いずれにせよ、「LA LA LAND」では過去作へのオマージュがどちらかというと鼻についたが、こちらは映画史と直接被せることで、オマージュが気にならなくなった。直接的すぎるにはすぎるが、気になるよりはいいと思う。

 

「聖地には蜘蛛が巣を張る」

実際に、イランのマシュバドであった連続殺人事件をベースにした作品。貧困、性差別が宗教的規範によって覆いつくされる。音楽の使い方がうまく、映像体験としても秀逸。ただ、映画を観ていると宗教の違う遠い国で起こっていることと思ってしまうが、17人目の女性は殺され続けているし、次のサイードが生み出され続けているだろう。

 

「ベネデッタ」

17世紀に実在した修道女であるベネデッタの話。ベネデッタが奇跡らしいものを起こすのだが、映画の中ではそれがいかさまか、真実かははっきりしない。ただ、正直それはどちらでもよく、彼女は最終的に、男性優位の宗教序列内で、女性の勝利という奇跡を起こすのである。