「私がやりました」※ネタバレあり

フランソワ・オゾン監督の「私がやりました」を観てきた。

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コメディタッチでストーリーは軽快に進むが、結局何をしたかったのかと考えると難しい映画である(ちなみに別にコメディとして笑えるわけではない)。

なぜ難しいかといえば、ストーリー的にジェンダーの話を扱っていると取れるのだが、実際のところあらゆるジェンダーについてエンパワーメントしてないように思えるからだ。性別に関係なく、それぞれの「らしさ」から解放しようとした「バービー」とは大違いである(別に映画として似ていないのだが、例としてわかりやすいので挙げる)。

男性はほぼ全員がダメなやつであり、女性も小気味よく成り上がっていくのだが、そもそもそれも性被害にからむ正当防衛としての殺人によってである。実際には、殺人そのものが別の人間によるものなのだが、結果としてではなく、意図的にそのスキャンダル性を利用して主人公たち2人は成功を収める。

このようなプロットは、被害者による売名行為として受け取れ、近年のMe Too運動への皮肉でない限り、手放しで面白かったと言いにくいと感じた。女性側も、成り上がり方が歪であり、どのように受け止めるべきか難しい。結局、何がしたかったのかと思わせる作品となってしまっている。

ちなみに、後半、真犯人と思われるイザベル・ユペールが登場するのだが、個人的に重たい作品でしか見たことがなかったので、ワイルダー映画の登場人物のような立ち振る舞いのイザベル・ユペールを見るのは、個人的に新鮮であった。