ヴィム・ヴェンダースの「PERFECT DAYS」を観てきた。
事前に「ほぼ何も起きずに日常が繰り返され~」というようなレビューを読んでいたのだが、実感としては派手なことは起きないが、割とずっと何か起きている映画だった。職場の後輩に連れ出されたり、突然人が尋ねてきたりと、平山にとって何か起きた日でストーリーが構成されている。
特に、長年会っていなかったと思われる妹と再会するシーンでは、妹から「これ好きだったでしょ」と高級そうに思われるお菓子が渡され、平山がもともと裕福な生活をしていたことが示唆される。どうやら平山は、今の生活になってしまったというよりも、自ら選んで今の環境にいる可能性が高そうである。
そして、平山はその生活にそれなりに満足していると思われ、そういう点で、この映画はストア的である(監督のインタビューでは彼は僧侶的だと言っていた)。ここで問題となるのは、個人の生き方としては、確かに1つの理想を描いているが、一方で、時折顔を見せる社会の影や矛盾に対しても、荒波を立てないことが1つの美徳としても写っているいるように感じた。THE TOKYO TOILETが映画製作のきっかけとなっており、そのような描き方しか無理なのかもしれないが、上映後のゴミが散らばる映画館で、それでいいのだろうかと考えさせれもした。